腹膜播種外来
腹膜播種について
腹腔内臓器のがん(胃がん、大腸がん、卵巣がん、腹膜偽粘液腫など)が進行することにより、がん細胞が腹腔内を覆う腹膜に生着して転移した状態です。腹膜播種に対する治療は、通常は抗がん剤治療が施行されているものの、十分な効果は得られていません。
しかし、腹膜播種の状況によっては切除可能となる方がいらっしゃいます。腹膜播種を切除する腹膜切除術によって、比較的良好な結果が出ており、欧米では選択肢の一つとなっておりますが、日本ではごく限られた専門施設のみで施行されているのが現状です。
当院での取り組み
- 腹膜播種治療の専門施設である、滋賀県草津市にある淡海医療センター(旧 草津総合病院)での腹膜播種治療の経験をもとに、担当医が専門外来で対応致します。
- 当院では審査腹腔鏡を行うことで、専門施設との連携を円滑に行います(当院では腹膜切除術、術中温熱化学療法、腹腔内化学療法は行っておりません)。
- 腹水の多量貯留に対して、腹水濾過濃縮再静注法(CART)を施行しております。
診療・治療の流れ
1. 外来予約
- 当院に電話いただき、「腹膜播種外来」の予約をお願いしております(紹介元医療機関さま、患者さまのどちらでも可能です)。
- 診察予定日前に、当院に診療情報提供書・画像等を郵送もしくは持参いただけますと、診察までの時間を短縮することが可能です(特に画像所見は、確認した上で診察となりますので時間をいただきます)。
2. 当院外来
- 紹介元医療機関さまからの診療情報提供書(手術記録・治療歴・検査結果・画像検査等)をもとに確認致します。
- 必要時には、当院で追加検査を行う場合があります。(採血検査、画像検査等)
3. 当院入院
- 腹膜切除術の適応判断のために、入院で審査腹腔鏡(全身麻酔下、腹腔鏡による腹腔内観察・評価)を行います。
- 審査腹腔鏡の結果をもとに、腹膜切除術の可否を判断致します。
4. 紹介
- 腹膜切除術が可能と判断された場合、専門施設にご紹介致します。
- 紹介先は、担当医が勤務していた淡海医療センター(旧 草津総合病院)等です。
- 腹膜切除術(術前に事前の外来審査が必要です)
5. 当院外来
- 専門施設での治療後、退院後の定期診察(採血検査、画像検査)は当院で行います。
- 必要に応じて、専門施設と連携して診療致します。
腹水濾過濃縮再静注法
腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:CART)とは
お腹にたまった腹水を
専用バッグに回収します。

回収した腹水を濾過し、腹水中の
がん細胞や血球成分を取り除きます。
アルブミン(たんぱく質)などの
有用成分を濃縮します。

アルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴で体内に戻します。
専用バッグに回収します。

回収した腹水を濾過し、腹水中の
がん細胞や血球成分を取り除きます。
アルブミン(たんぱく質)などの
有用成分を濃縮します。

アルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴で体内に戻します。
利点
- お腹の圧迫感が軽減されます。
- 自覚症状の軽減により、日常生活が楽になります。
- 自分のアルブミンを補充することで、栄養状態の改善が期待できます。
副作用
- 発熱、悪寒・戦慄、血圧変動(低下・上昇)、嘔気・嘔吐、ショックなど
- CARTは入院にて施行し、副作用等に備えます。
保険
難治性腹水の患者さまが保険適応となります。
患者さま・医療関係者さまへ
当院で取り組んでいる腹膜播種治療は、当院だけで完結するものではありません。これまで治療いただいた紹介元医療機関さまに連携・協力いただいた上で、専門施設での治療に専念できるようにするものです。
腹膜播種と診断されても、状況により治療法は変わります。その選択肢のひとつとなりうるのが、腹膜切除術です。腹膜播種と診断されて話をお聞きになりたい患者さま、腹膜播種の治療に難渋されている医療関係者さま、ぜひご相談ください。
受診希望の方は当院へ電話連絡いただいて、事前予約(2024年4月〜 火曜日午後)と診療情報提供をお願いしております。まずは電話でお問い合わせください。
担当医師
基 俊介